医学論文ログ

「このような医学論文がある」ということをとても短く紹介するブログです。最近読んだ、もしくはチラ見した医学論文を、内容や質を問わず気の向くままにつぶやき程度に書きます。要約ではなく、自らの独断と偏見でこんなのに役立ちそう、使えそうというような視点でつぶやいています。

特発性冠動脈解離(SCAD) PMID: 32819471

Review

特発性冠動脈解離(SCAD)

  • 疫学
  • 臨床像
  • 診断
  • マネジメント

 

特発性冠動脈解離(spontaneous coronary artery dissection: SCAD)に関する総説。急性冠症候群として、中年女性の心筋梗塞の原因にもなりますが、妊娠との関連、患者像の違いといった疫学的な特徴、さらに誘発因子など個人的には知らないことも多く役立ちました。お役に立てば幸いです。

PMID: 32819471

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

Hayes SN, Tweet MS, Adlam D, Kim ESH, Gulati R, Price JE, Rose CH. Spontaneous Coronary Artery Dissection: JACC State-of-the-Art Review. J Am Coll Cardiol. 2020 Aug 25;76(8):961-984. doi: 10.1016/j.jacc.2020.05.084. PMID: 32819471.

クロルタリドン vs. ヒドロクロロチアジド -高血圧による心血管イベント- PMID: 36516076

RCT

クロルタリドン vs. ヒドロクロロチアジド -高血圧による心血管イベント-

  • 主要評価項目: 心血管イベント
  • 追跡期間の中央値2.4年

 

サイアザイド系利尿薬のひとつであるクロルタリドン(12.5-25mg/日)とヒドロクロロチアジド(25-50mg/日)の比較。13,523名の65歳以上の高血圧患者の追跡にて比較したところ、主要評価項目(心血管イベント)はクロルタリル群で10%、ヒドロクロロチアジド群で10.4%で有意差なし(HR 1.04; 95% CI, 0.94 to 1.16; P=0.45)、副次評価項目の例として低カリウム血症の有害事象はクロルタリル群で有意に多い(6.0% vs. 4.4%, P<0.001)という結果になりました。クロルタリドンの有効性(心血管系イベント)は非劣性だが、安全性は劣る可能性があるというひとつの新たなエビデンスとして、日本ではご縁がないかもしれませんが、なぜ過去に販売中止になったのかを振り返るきっかけとしていかがでしょうか。販売中止とはいうものの、低カリウム血症の発生率の差も大きいと捉えていいのかは疑問が残ります。

PMID: 36516076

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

Ishani A, Cushman WC, Leatherman SM, Lew RA, Woods P, Glassman PA, Taylor AA, Hau C, Klint A, Huang GD, Brophy MT, Fiore LD, Ferguson RE; Diuretic Comparison Project Writing Group. Chlorthalidone vs. Hydrochlorothiazide for Hypertension-Cardiovascular Events. N Engl J Med. 2022 Dec 14. doi: 10.1056/NEJMoa2212270. Epub ahead of print. PMID: 36516076.

多関節炎とその鑑別疾患(原因) PMID: 31657698

Review

多関節炎とその鑑別疾患(原因)

  • 多彩な原因
  • 原因ごとの特徴や比較

 

多関節炎の原因となる鑑別疾患の総説。膠原病感染症、悪性腫瘍、薬剤性といった多彩な原因の具体的な疾患名・薬剤名や、よく見られる原因の特徴や比較といった内容でまとめられています。多発性関節炎を有する梅毒患者の掌蹠膿疱症というような写真も数点掲載されていて役立ちました。

PMID: 31657698

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Alpay-Kanıtez N, Çelik S, Bes C. Polyarthritis and its differential diagnosis. Eur J Rheumatol. 2018 Oct 1;6(4):167-173. doi: 10.5152/eurjrheum.2019.19145. PMID: 31657698; PMCID: PMC6812894.

アルツハイマー病に対する新薬レカネマブ (Phase 3) PMID: 36449413

RCT

アルツハイマー病に対するレカネマブ (Phase 3)

・50~90歳代の早期アルツハイマー病患者

・主要評価: CDR-SBスコア

 

アルツハイマー認知症に対する新規治療薬として期待されるモノクローナル抗体 レカネマブ(Lecanemab)の臨床第Ⅲ相試験(AHEAD 3-45試験)。主要評価としてCDR-SBスコア、副次評価としてPETでのアミロイド評価、ADAS-cog14、ADCOMS、ADCS-MCI-ADLスコア等を比較しています。PETにおけるアミロイド評価の劇的な改善に比べると、他の項目の改善はあるもののあくまで進行を遅らせるというような結果に感じられます。社会問題にもなっている認知症の新薬ということで方法や実際の数値も含め、興味のある方はチェックしてみ下さい。

PMID: 36449413.

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van Dyck CH, Swanson CJ, Aisen P, Bateman RJ, Chen C, Gee M, Kanekiyo M, Li D, Reyderman L, Cohen S, Froelich L, Katayama S, Sabbagh M, Vellas B, Watson D, Dhadda S, Irizarry M, Kramer LD, Iwatsubo T. Lecanemab in Early Alzheimer's Disease. N Engl J Med. 2022 Nov 29. doi: 10.1056/NEJMoa2212948. Epub ahead of print. PMID: 36449413.

溺水患者のマネジメント PMID: 33065105

Review

溺水患者のマネジメント

 

フローチャートや重症度の分類、病院での治療やマネジメント、CPRの継続・中断だけでなく、病院前での対応も含めて、溺水に関して広く知ることができる総説です。フローチャートは見やすく感じました。恥ずかしながら知らないことも多く、参考になりました。皆様の参考となれば幸いです。

PMID: 33065105.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

Szpilman D, Morgan PJ. Management for the Drowning Patient. Chest. 2021 Apr;159(4):1473-1483. doi: 10.1016/j.chest.2020.10.007. Epub 2020 Oct 14. PMID: 33065105.

マスク着用とCovid-19への罹患率の関係 PMID: 36351262

Observation

マスク着用とCovid-19への罹患率の関係

  • 学校の学生と職員の罹患率
  • マスク着用要請の有無/期間による比較

 

第6波収束後のマスク着用要請解除の有無/時期と、その後の学内におけるCovid-19(コロナ)の感染者数より、罹患率の経過を比較。第7波の際のGreater Bostonにおける学校72校の学生と職員が対象。マスク着用要請を継続した学校では、Covid-19への罹患率の増加こそ防げなかったものの、マスク着用要請した学校の方が罹患率が少ないという結果でした。地域の感染状況といった周囲の環境の影響や学校という環境など、考慮すべきことはありますが、興味深い結果でした。ワクチンや治療薬に比べて、マスク着用に関する研究は少なく感じたので特に興味を持ちました。お役に立てば幸いです。

PMID: 36351262.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

Cowger TL, Murray EJ, Clarke J, Bassett MT, Ojikutu BO, Sánchez SM, Linos N, Hall KT. Lifting Universal Masking in Schools - Covid-19 Incidence among Students and Staff. N Engl J Med. 2022 Nov 9. doi: 10.1056/NEJMoa2211029. Epub ahead of print. PMID: 36351262.

除細動の比較 "DOSE VF Clinical Trials" PMID: 36342151

Intervention

除細動の比較 “DOSE VF Clinical Trial”

  • 標準的な方法
  • VC Defibrillation
  • DSED

 

院外における成人の心停止における除細動の蘇生や後遺症に関するカナダでの比較。 DSED (rapid sequential shocks from two defibrillators) やvector-charge (VC) defibrillationでは標準的な方法に比べて蘇生率が高く、standard群との相対危険度はそれぞれ2.21 [95% CI, 1.26-3.88], 1.48 [95% CI, 0.81-2.71]であった(蘇生率: DSED > VC > standard)。ROSC・退院や、modified Rankin Scale Score(神経機能評価)といった結果もあります。普段からあまり意識した領域でなかったため、学びとなりました。他にも気になる方がいらっしゃれば幸いです。

PMID: 36342151.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

Cheskes S, Verbeek PR, Drennan IR, McLeod SL, Turner L, Pinto R, Feldman M, Davis M, Vaillancourt C, Morrison LJ, Dorian P, Scales DC. Defibrillation Strategies for Refractory Ventricular Fibrillation. N Engl J Med. 2022 Nov 6. doi: 10.1056/NEJMoa2207304. Epub ahead of print. PMID: 36342151.